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2012年2月20日月曜日

メタンハイドレートは日本を救えるのだろうか


「燃える氷」とも呼ばれる、次世代の代替エネルギーとして注目を集めるメタンハイドレート(以下MH)。つい先日、渥美半島沖で世界初となる海底採掘調査で再び世間の期待を集めました。でも、実際にどんなエネルギー資源となりうるのかは、詳しく記されていません。私はそこを知りたかったのです。



・目次

  1. 研究過程
  2. 都市ガスとしての流用
  3. 燃料電池への流用
  4. メタンハイドレートの世間での認識
  5. MH採掘からメタンガス抽出技術の難しさ
  6. 研究につきものの資金不足と国際問題
  7. メタンガス自体に地球温暖化への懸念がある?
  8. 地震を誘発するとの声も
  9. 最後に

・研究過程

研究が開始されたのがおよそ10年程前。3つのフェーズによって計画されていて、1に基礎研究から始まり、2に採掘調査を試み、3に商用化を目指した研究という流れになっています。現在は第2フェーズに移行しており、これが渥美半島沖の海底採掘調査に繋がっています。
研究機関としてはメタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム(通称MH21)が設立されており、経済産業省を始めとする国家プロジェクトとなっています。

・都市ガスとしての流用

現在都市ガスに使われているおよそ9割がメタンガスとなっています。天然資源が無く、90%以上輸入に頼る日本にとって、自国で賄えるようになれば、ガス料金も下がるかもしれませんし、輸出して経済を回すことも可能になるかもしれません。ガスを液体に溶かす技術はお手のものなので、貯蔵・輸出も視野に入ります。

余談ですが、メタンガスなど天然ガスは無色無臭のため、都市ガスにはガス漏れ検知のために、臭いを付加していたりします。

・燃料電池への流用

燃料電池とは、ハイブリッド車に変わる、水素を燃料とした車など。他には充電池や公共の乗り物など、あらゆる動力源になり変わる可能性を秘めています。水素はMHの分解の際に抽出される水から採取する研究がされています。MHは一粒で二度おいしいお得な資源なのです。

メタンガスと水素は、燃焼してもCO2排出量が石油燃料に比べ少ないため、環境保全に繋がる熱エネルギー減としても注目されています。

・メタンハイドレートの世間での認識

「石油燃料に代わる物」というイメージが強いと思います。日本国内におけるMH埋蔵量は、都市ガス100年分に値すると言われており、世界有数の埋蔵国となっています。なお、MH1㎥からメタンガス160~170㎥を精製可能とされています。

実際には良いイメージしか伝わってませんが、裏では主に開発運用資金不足と、権力と国際問題が関係しています。

・MH採掘からメタンガス抽出技術の難しさ

MHは低温高圧の状況下で作られる物質で、海底の貯蔵層にパイプを刺しただけではガスの抽出は促せません。石油や石炭などとは違い、勝手に湧き出たり採掘しやすい場所にあったりするわけでもないので、現在はこの採掘方法の確立が、商業化への大きな課題となっています。

深度1000~2000mの海底下0~200mに眠るMHは、人間が潜水して作業できる環境ではなく、海上での遠隔作業からいかにしてメタンガスを抽出させるかが課題となっています。それを解決する方法が、「減圧法」と呼ばれている方式です。


これは、掘った井戸内の水を抜いて圧力を下げることにより、メタンガスの抽出を促す方法です。現在もっとも確実かつ最大の効果があるとされる方式です。

問題点として水と砂の処理をどうするかが課題となっています。カナダの永久凍土での陸上産出実験では、これらの問題をクリアし、6日間メタンガスの排出に成功しました。これは世界初の事例となります。

・研究につきものの資金不足と国際問題

過去500億を投じた国家プロジェクトとして、日本海での調査を行った結果、大した成果をあげられず問題視されました。こちらは韓国と北朝鮮との領土問題も関係しており、竹島を始めとする海域でのお互いの主張権はみなさん知っている通りです。韓国はMHの研究論文なども活発に発表しており、また自国周辺での埋蔵がほぼないため、竹島周辺での調査に乗り出したい所でしょう。

対して今回の太平洋側ですが、こちらも過去から調査は行われていましたが、300万にも満たない投資で研究自体もままなりませんでした。こちらは東南海地震に関係する南海トラフに、世界有数の埋蔵量があると判明したので、地殻調査のついでに研究を行なっていたと思われます。

太平洋側になると米国との問題が生じてきます。未だに戦敗国としての日本で居続けないといけないならば、当然ここの資源の所有権に口を挟まれるかもしれません。Noと言える外交でなければ重要な資源は守れないとは思います。

調査するにも、1日船を出しただけで、人員機材などの必要経費で300万が吹っ飛ぶ研究です。なので国の支援が無い民間企業では採掘などの研究は非現実的で、これも技術革新への歩みを進めている要因です。現在の技術では、「ハイコストローリターン」なので、商業化は大丈夫なのか? という疑問視もされています。しかし、低コストでの運用が可能になれば、日本経済に与える恩恵の大きさも発表されています。

・メタンガス自体に地球温暖化への懸念がある?

地球温暖化としての原因にCO2が挙げられますが、メタンガスもそうではないかとの声もあります。太古に地中から大量のメタンガスが発生し、気温の上昇により生態系が狂ったとの研究結果もあったりします。しかし、メタンガスは空中で10年程で分解され、本当にそうなったとしても、非常に緩やかに進行もしくはなるはずがないとの声もあります。

空中に大量のメタンガスを放出する技術でもないですから、この問題は懸念に値しないでしょう。ただ、燃焼でのCO2排出量は石油に比べてごく少量ということだけは確かです。CO2自体にその能力があるかも、最近は疑問視されていますけどね。石油から脱却しようとする世論から、利権が絡む発言じゃないかと思ってしまいます。

・地震を誘発するとの声も



上の図を見て頂ければわかりますが、MH貯蔵層は地殻プレートが入り込む箇所に多く存在します。おそらく地熱と深度の関係が丁度いいのでしょうね。地震活動が活発な宮城沖に無いのは、比較的浅い場所だからかと思います。

海底採掘するにあたり、ボーリング調査は必須ですし、それがプレートの破壊を誘発させるとの声はもっともです。それに、MHからメタンガスを抽出するということは、貯蔵層を「溶かす」ことになり、地層に空間を生じさせ、地殻の崩れを促進させる恐れもあります。一方ひずみを解消させるのではないかとの声もあります。

どっちもそれっぽいですけれど、南海トラフ全ての貯蔵層がなくなると、影響はあるかもしれませんね。私としては、ひきずり込まれているプレートにピンポイントでちょっかい出さない限り、そんなことは起きないだろうとは思います。けれど、絶対に無いとは言い切れない事案なので、判断が難しいところでしょうね。

・最後に

メタンハイドレート海洋産出試験プレス説明会資料 ※参考&転載させて頂きました。

あとはYoutubeの動画など、いろいろ勉強になりました。
原発問題が叫ばれている昨今では、代替エネルギーとしての重要性は大きいです。が、もたらす可能性に向けてのインフラがまだ整っていません。天然ガスと水素で何が出来るのか? を考えると、あまり効果的ではないようにも思えます。ですが、有限資源の石油から脱却するための、ひとつのステップではないかと思います。

MHは日本を豊かにしてくれる可能性を秘めています。生産業の輸出が危ぶまれる中、新たな産業としての可能性もあります。かき氷を売るようにMHを店頭で販売したりとか、そう遠くない未来に待っているのかもしれません。
 
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