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2014年1月6日月曜日

『魚との知恵比べ』を参考にしてルアーフィッシングに活かす

 

物を言わぬ魚に関しては、人間よりもよっぽど研究が進んでいない。

魚に関しては、やはり一番密接に暮らしている漁師がよく知っている。

当著は漁法や釣りの大衆魚を科学的実験から、「本当にそれは効果があるのか」を検証している面白い内容。

 

ルアーをやっていると気になってくるのが「何故喰わないか」の1つ。

それを打開すべく、参考になるかなーと思って読んでみた次第であります。

 

 

  • 魚の視力は人間よりはるかに悪い

種類にもよるが概ね0.1程度。視力検査で一番上の「C」が「○」に見えるレベルだと思う。

これは視力が徐々に悪くなっていったメガネっ子にはわかりやすいかと。

201416目が良い 201416-2目が悪い

 

例えばヒラメさんを釣るには、透明度が高く静かな海がいいと言われている。夜なら満月など月光のある時がいいらしい。

これはエサまたはルアーの視認性が重要と受け取れるため、ヒラメカラーには派手系が多いのも頷ける。

夜行性のヒラメさんは夜に泳ぎまわるらしいので、夜間で視認性がある日──つまり夜間の光量が多い満月ほど大チャンスだと受け取れる。

ちなみにタチウオは満月だと今一らしい。これは集魚灯の効果が薄れるせいかな。

 

魚の視界は人間よりも広いと言われるが、これは眼球の位置にもよる。

サバやアジみたいに左右に付いているのなら確かに広範囲ではある。でもヒラメさんは上方視認に特化している。海底にじっと潜んで上を通る獲物を狙うのだから当然だろう。

同じ平べったい系のマゴチさんは底をずるようなルアーの引き方でも見つけてくれるが、ヒラメさんは底から離して見つけてくれるように動かす方がチャンスが増える。

 

本著では「魚が図柄・模様・色等を判断出来るか」の検証も行っている。

端的に言うと「魚種にもよるが判断は出来る」という結果。意外と思ったのは、『海の賢者』と言われるイシダイ様よりブルーギルの方が頭(飲み込み)が良かったという所。

でも実験での学習能力からすれば、『海の賢者』と云われる理由もわかる。魚の中では頭が良いことには変わりがないのだ。

 

  • 魚を誘引する音・色・匂い

メジナの撒餌に関する研究が載っていた。

オキアミよりも酒粕の方が効果は高いらしい。かと言って、どちらもやり過ぎると誘引能力は落ちるということ。

これに関しては純粋に「匂い」のみでの誘引実験である。

 

そして餌のオキアミを着色した実験では、「黄色」がよく好まれたようだ。

黄色に染められたオキアミ──見たことないけど、今度着色料使って染めてみよっかな。

 

ルアーの色に関しては個人の嗜好にもよるとしか言いようがない。本当に好みの問題になる。

夜に真っ黒なルアーで釣れる時もあれば、スケルトン仕様で日中釣れることもある。

疑似餌で騙すには、自然界に限りなく近い状態に近付けるのが鉄則でもあるが、鉄板カラーなど量子みたいに「あるようでないような存在」という結論しか出せない。

それよりも大事でこれが前提でないと始まらないことと言えば、「腹を空かせた魚が居ること」に集約される。

 

よく音や光には敏感というが、それを利用した漁法もあるので一概とも言えない。

でもルアーでは重要な要素である。

マグロの一本釣り漁では、船体からシャワーを出して音を出し、生き餌を撒いて魚を止めて釣り上げる。

人工的なナブラに反応すると考えると、回遊魚は魚がいるからナブラを起こすのではなく、海面で鳥が魚を捕る音や、暴れる小魚の音に反応して寄ってくるのではないだろうか。

 

イワシボールとか小魚が群れて大型の魚に模す行動は、鳥からすれば「エサ、パイイッパイ!」と格好の目標となるけれど、目の悪い魚からすれば、ぼやけて逆に食べられると錯覚するのだろうなあ。

ベイトが居て、次に鳥が来て、ボイルが起こる。

船や浜で釣りをする時はまず鳥を探せとは聞くけど、先のマグロ一本釣りの詳細を知って納得した。

 

  • 一度逃した魚は学習して釣れなくなるのだろうか

クロダイでの実験結果からすれば「YES」、かといって魚種によっては「NO」である。

これは釣り用語から引用すると「魚がスレる」と言われている。

まあどんな動物ですら、自分の身に危険なことが起きれば次の経験に活かすのはなんとなくわかること。そんなことでサバンナで生きていられるの? という話だ。

 

一度針にかかったクロダイは、最低でも一日近くは反応しなくなったという。

しかもその情報は、遺伝によって少なからず子に伝わっていくという驚きの結果だった。

 

今まではこのルアーで爆釣だったのに──

昔より今は釣れなくなった──

よく聞く言葉だと思うが、実験結果を聞くと妙に納得してしまう。

魚影が薄くなっている要因があったとしても、危険な経験をした個体の情報が遺伝していくのであれば、自然界といえど年々釣れなくなっていくのは至極当然なことなのだろう。

釣り人が増えれば魚の警戒心は増していくわけで──なるほどなるほど、釣り人がポイントを公開したくない理由が科学的にも証明された瞬間でもある。

 

それでも過去から現在まで安定した釣果が聞けるのは、釣り具メーカーと釣り人達の努力の成果なのだろう。

 

  • 最後に本の感想

魚に関わっている人にとっては面白いんじゃないかな。私みたいに「釣り攻略のきっかけになれば……」程度の興味でも楽しめる。

実験結果を見ると、漁師は自然に試行回数を重ねて最も効率が良い方法をとっていることがわかるし、何故それが有効なのか科学でも説明がつかない点も多かったりする。

漁礁を青く塗ったら効果が倍増したとか、海岸線に緑が多い場所は魚が寄り付きやすいとか、半信半疑だけど色々参考になる所が多い。

 

でも疑似餌の項目では参考になる点は少なかったかな。

魚に関しての論文はネットでも見れるけど、釣りを研究対象としていないので今一。でも習性に関しては詳しく書かれているのが多いので、一見する価値はある。英文が多いけど。

 

さて、黄色のワームでも買ってくるか……。

 
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