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2015年4月22日水曜日

こちらが不利になるキャッチ・アンド・リリース

キャッチ・アンド・リリース(以下C&R)は悪いことではありませんが、アングラー側にとって特別良いこともなかったりします。

今回はそんなお魚雑学コーナー。

2015-02-08 05.18.31


これは魚のスレ、つまり学習能力に関係があります。

釣り関連の書籍でこういう事柄が語られることはあまりないと思いますが、魚類学の書籍では水産資源保護を最終目的とし、特定種を研究した内容がまとめられていることが多い。

 

魚の学習能力とは大雑把にいえば『反射』で、危機回避のために自分に危害が及んだ事象を記憶します。

彼らだって脳を持っているわけで、特定の時間に給餌していれば直前にエサをねだるよう浮上してくることがあったりする。言わば、『パブロフの犬』ですね。

その記憶力がどのくらいかってのは置いておいて、これを利用して『釣れにくい個体を生み出し、個体数維持に貢献する』という研究が記された本を読んだことがありました(書籍名忘れましたが)。

 

『魚のスレ』とは、特定の仕掛けで反応していた魚が、ある時にまったく反応しなくなることをいいます。

そうなるのは何故かというと、その仕掛けが彼らにとって危険と判断されたからと受け取ることができます。

これを回避する手っ取り早い方法は、『誰も使ったことがない仕掛けを使う』になるでしょう。

糸の太さを変えるとか、ルアーの大きさ・形状・色を変えるとか、ルアーフィッシングでもまあ色々と簡易的な回避法はありますね。

新製品のルアーが釣れやすい起因はこれがあるんじゃないかなーとは考えています。

魚のスレは条件反射ともいえますが、これが記憶されているのは個体によってまちまちで、数年に渡る魚種もいるようです(賢いと言われる魚種程長い)。

それを利用して釣れにくい個体を生み出し、釣りによるまだ小型の魚を守るためには、ようするに『釣り針が危険であること』を学習させればいいわけです。

──が、養殖された放流魚全てにそれを憶えさせるのはコストと時間がかかりすぎるので実現が不可能に近いですね(先天的に記憶させられれば別だろうけど)。

 

……とまあここまで書けば察するかと思いますが、釣って逃がした魚は同様の仕掛けでは当分釣れない可能性が高いってわけです。

「大きくなって帰っておいで」はあながち間違いではないというわけですね。

C&Rが推奨される管理釣り場ではこれが顕著となり、ルアーに反応しない魚が増えていき、釣れない釣り場が生まれるわけで、これは間接的に、釣り具や漁具の発展にも繋がっています。

とはいえ、C&Rは魚にとって良い事とはいえず、誇らしくするものでもないと思います。

※参考:キャッチ・アンド・リリースとその後の死亡率

最近ではフィッシュグリップによるアゴ貫通が問題提起となっています。

まあスズキは内湾や河川で居付きの個体はボラ並に臭いし、日本人は基本的に刺し身として生で食べたがるので、火を通す欧風レシピではスズキはポピュラーなのがあまり知られてないせいですかね、リリース率が高いと思います。

対してヒラメは漁協で制限されている大きさがあるので、(地域によって違いますが)40cm以下はリリースってのが定着しています。

漁師には漁獲制限が設けられていますが、釣り人にはそれを知る機会が少ない、もしくは無いのが現状です。

 

魚にとってエラが損傷することが最も死因率が高いことは先の参照サイトでも知ることができます。

素手で触ることによる表皮の火傷や粘膜の損傷、地上に釣り上げる時点で魚にとってダメージは多岐に渡るわけでして、「小さな個体はリリースしましょう」だけでは漠然としすぎていて、いずれは個体を減らす要因となってしまっている気もします。

あくまで娯楽として釣りを捉えている人には魚の保護に関する知識は知る機会がないかと。

割りとメディア上でもルアー丸呑みでエラまでフックが到達しているのにリリースするの?って場面もあったりする。

体制的にそうせざるを得ない状況ってのもあるかと察しますが、エラが傷ついて血ドバーってなっている魚を逃した行く末はどうなるか…ってのは影響力が強い人が発信するべきだと思います。

 

自分にとってC&Rとは、「偽善による結果であり、他人に誇ることでもない。ただその過程と基準は統一すべき」と考えている。

”いずれ死ぬだろうから食べる”ってのも批判を受けると思いますが、”見殺しにする”のと”死を看取る”という価値観に置き換えれば、受け取り方も変わるんじゃないかな。

よくいわれる”特別大きい”という意味のランカーサイズ。

あの大きさに達するのに最低でも10年近くかかるってのは大半の釣り人には知っておいてもらいたいものです。

 
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