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2015年7月1日水曜日

バラシマスター脱却法を考える~ヒラメ編【後編】

「ディスカッションもクライマックスになるが、このロジックのターニングポイントは所詮、アングラーのテクニックに行き着くんだよ。────わかるね?」

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釣りを知らない人「へーそうなんですかー(棒)」

釣りを知っている人「(身も蓋もねぇ…)」


~前編はこちら~

前編では主にトレブルフックをdis──ああいや、利点と欠点を主に書きました。

日本では技量によって道具の足りない部分を補い、海外では道具によって足りない技量を補うという傾向があります。日本は既知の製品を極限まで高める技術力は高いのですが、新たな開発力は成功前提でないと予算がでないから低かったり見切りが遅いわけでして、まあスマホやらデジタルデバイス関連での敗北を思い出してもらえばわかるかと思います。

トレブルフックは向こうが先に考えたものですが、より強靭で世界一の水準に作り上げたのはこちらです。ですが、エサ釣りで使う「釣り針」はこちらがパイオニアで、特定の魚をかけることに特化しつつ古来より進化してきました。

近年では資源保護のため、海外で釣りは「スポーツ≧レジャー」の傾向が強まり、様々な規約が設けられ、海上で釣りをするのにも許可が必要な海域が多くなっています。同時にトレブルフックは規約違反ともなり、向こうのルアーフィッシングでは、『魚をなるべく傷つけずに釣りを楽しむ』としてシングルフック(おまけにバーブレス)が主流となっています。

では何故シングルフックが日本で主流にならないのかというと、「魚が掛かりにくいから」です。まあ「たくさん釣るほうがスゲー」という風潮なので、「釣れない」となると消費者ウケが悪いせいです。褒めることでしか売ることが出来ない悪癖ですね。

──まあそれは置いておいて、本題。

トレブルフックが「ひっかける」ことに特化したフックと前編でいいましたが、シングルフックは「逃さない」ことに特化したフックともいえます。後編ではシングルフックとドラグ設定についてが主になります。

 

  • シングルフックはバラし難い

シングルフックが何故バレにくいかというと、力の伝達効率が良く口の硬い所でも貫通しやすいという点。飲み込まれても口まで引っ張り出し、丁度そこで引っかかるように設計されているフックもあります。種類にもよりますが、ベンドカーブの深さの恩恵により魚を抑えこみ、バレにくくなります。

他にもメリットとしては、「障害物に引っかかる要素を減らせる=根掛かり対策」があります。ダブルフックもありますけど、大半のアングラーがシングルフック化するいきさつとしてはこれが一番じゃないかなと思います。

ただ、ミノープラグには向いていません。

トラウト用など5cm前後のミノーなら半分丸呑みするので丁度いいのですが、ソルト用の9cm以上ともなると、つけてみるとわかりますが掛かるビジョンが見当たりません。なにより泳ぎが変わってしまう恐れがあるので、初期状態でシングルでもない限り、自分で模索する必要性があります。

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とまあこんな感じでルアーは咥えるがフックがかかる要素がないです。

口を完全に閉じた時にフックが口の中に入っている──、そんな状況を作り出せるならば最も針掛かりがいいのがシングルフックです。そうなるとテール部分にシングル1本で十分なわけで、ルアーを追ってくるフィッシュイーター相手では最も効率が良くなります。

シングルフック化するのであれば、メタルジグやレンジバイブなどボディが薄いタイプが向いてはいます。

市販のミノープラグなどは流体力学などを元に開発し、トレブルフックを使用する前提で製品化しているので、フック自体の重量+受ける水流などが変化するとまともに泳がなくなったりとバランスを崩します。なのでシングルフックに変えることは一概に良いとはいえません。

ソルトでは初期でシングル推奨なのはGTかマグロ用くらいですね。20kg以上のサイズに耐えるトレブルとなると逆に食わせるのに効率が悪くなるので、太軸で耐久力のあるシングルを付けるほうが多いです。使うルアーがノンリップの動きがおとなしい(スイングアクション)タイプやポッパーなので丁度向いているってのもあります。

ゲームフィッシングと謳うくらいなら、魚をなるべく傷つけず捕れるシングルフックもしくはバーブレスが推奨されて当然なのですが、「(テール1本だ、やべえ!)…こういう時にこうすると他のフックも掛かりますクイックイッ」とするのもテクニックの一つではあります。まあ言ってることとやってることが矛盾しているメディアアングラーも多いので個人の価値観次第ですね。

 

メタルジグに何故アシストフックが多いのかというと、ルアーの側面にフックを添わせることが出来て食い込みがいい、またはアクセントになるのと、フックを結ぶ糸が少なからず緩衝の役割を果たしつつ、メインラインから直線上に繋がることによって高比重のメタルでも魚が暴れることにより、遠心力でフックが外れることが理論上少なくなります。

元々上下運動(意味深)だけで済む船上ジギングが先駆でして、主に頭から食ってくる青物を効率的に掛けるために考えられました。最近はショアキャスティングでもアシストフックが付いているジグが多いですね。

しかし、アシストフックもただなすがままに着けているだけでは魚もかかりません。大半の魚は動きを止めている時にバイトしてくることが多く、ルアーのボディバランスとフックの位置によってはミスバイトが多くなります。

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フロントタイプといえどテーリング対策のためにそんなにこういう形にはなりませんが、テンションを抜いた状態でのフォールでは、大半はリアとセンターのような落ち方をしますね。

フックは当然ボディよりも軽いので、水の抵抗を受けて若干浮くということを計算しないと、長さのバランスが適当な場合魚種によっては全然掛からない恐れがあります。フックの大きさはルアーの幅より少し出るくらいが丁度いいかと。

ヒラメの場合は半分から後ろを主に食ってくるし、下から突き上げることが多いので、フックの位置は中心より後ろがベスト。ただ巻きならこれで丁度掛かるのですが、トゥイッチまたはジャーク主体となると、リアのアイに短い物を付けたほうがいいです。けれどもそういう動きでは中心部を食べてくることが多いので、どっちもどっちな感じがして正直アシストを使うのは非効率ではあります。

ちなみに前にアシスト後ろにトレブルを同時に付けている場合、実践上はトレブルの方に掛かっていることが大半でした。結論付けるなら、ヒラメ相手にフロントアシストを使うのはもう好みの問題です。

市販の物は青物・シーバス向けに作られた比較的短い(中心より前気味)アシストが多く、私が使うヒラメ向け(中心より後ろ)となるとあまりというか全然ありません。比較的簡単に作れてコスパもいいので、自作するのもいいかもしれません。

アシストにはフックが1本、または2本付いている物があります。2本の方が多いのは「作るのが楽だから」です。フロントアイにつけるなら1本、リアにつけるなら2本がいいんじゃないかと思います(特に大差ないです)。

アシストフックは自作のしやすさが利点ですね。

ラインシステムを作る2【SHIMANO TV】

管付きのフックなら鈴木斉さんの作り方で強度も問題ないです。管付きでなくても可能ではありますが、チモトが小さいと引っかかりにくくやりにくい。

ボビンと細糸を使った仕上がりが綺麗な市販品のようなタイプは、ボビンとフックを抑える機器が無くても作れます。簡単にいえば軸に糸を添えてぐるぐる巻きにして、接着剤で固定すればハイ完成なくらい簡単です。私は最近このタイプで作っていて、ミシン糸をぐるぐる巻いて作っています。

 

  • バレないドラグ設定

サーフで一番難易度が高いのが波打ち際の攻防。ここでドラグをいじらない人はバレる経験が多いんじゃないかなあと。

ドラグは魚と対峙するために重要なもので、タックルの臨界点近くでスプールを滑らせラインを送り込むことにより、タックルの保護のみならず魚を効率的に弱らせることができます。

この設定を間違えると、私のように残念な結果になることもあるわけです。

シーバスのエラ洗いを経験しているとわかると思いますが、あれは不意にテンションが抜けつつ、首振りの遠心力によってフックが外れやすくなるからです。対処法はロッドを倒しつつ巻いて抑えこむ感じにするか、いっそ巻いて引っ張るか。先にもいいましたが、ルアーを動かさせないのが重要です。

波打ち際での寄せ波と引き波のコラボレーションは、「エラ洗い」に相当すると思っています。引き波に乗って走られるとラインブレイクの要因になるし、かといって重量があるとある程度締めていないとあがらないジレンマ。

ドラグ設定に関しては、サーフにおいて正解はおそらく「ありません」

 

魚の重量にもよるし波の状況次第でいくらでも変化するので、ファイトしながら調節できるくらいの余裕は欲しい所。ドラグを出さず揚げることも可能ではありますが、魚に主導権を与えず走らせないことが先決で、ロッドがよほど高性能・高耐久でないとできません。

(10:50辺り)井上友樹さんの井上ファイトがいい例ですが、レクシータのような高弾性で強靭に作られたロッドでしか同じ芸当はできません。各社のヒラスズキモデルになると磯場でのぶっこ抜きも考えられているので、こういう強引なやりとりも出来ます。

ロッドに至っては「性能=値段」が最も顕著な釣具なので、魚を捕るためならステラやイグジストに思いを馳せるより金をかけるべきだと思います。

自分はスポーンと抜けそうにない相手であれば、波打ち際近くまで寄せたらロッドを立てて魚の重みでジリジリ出るくらいに調整しています。このくらいなら波打ち際でも常に巻いていれば一定のテンションを保てますし、急な突っ込みにも対処できます。

波が高い時には、自然と波打ち際の引き波も強くなるので、ドラグは緩めにしておいた方がいいです。早く浮かせすぎて波に乗らせてしまうとテンションが抜けるので、高低差の無い遠浅サーフでは引きを楽しむつもりでゆったりロッドを横にして浮かせ過ぎないようにやりとりするのが基本だと思います。

磯場とか周りに人が多いとかで速攻引き寄せる場合にはそんなこと言ってられません。そういう場合にはタックルのパワーが重要になります。ぶっちゃけると「値段」でもありますが、対象サイズよりワンランク上のロッドとラインが必要不可欠になります(リールは二の次)。

年に2回くらいワラサ(3kg前後)フィーバーするサーフは多いですが、釣れだすと等間隔でアングラーがひしめき合い、マッハで揚げないと恨まれるレベルです。これをゴリ巻きで寄せるにはブリ(8kg近く)を余裕で耐えるタックルが必要になります。シーバス・ヒラメ用では時間がかかるだけなので、瞬殺するためにはショアジギングモデルくださいなと店員に相談しましょう。

 

  • 最終的に重要なのは”経験” 

サイトでない限り魚を掛けるまでは運の要素が強く、掛けてから揚げるまでは技量の要素が強いと考えます。

冒頭でMr.TAMANAWAが言ったように、アングラー側の技量が問われるのが魚とのファイトであり、バラシ軽減するために必要なことであると思います。正直これは値段でカバーできるものじゃありません。技量っていうより経験が何より重要です。

「バラした」と言うだけなら簡単ですが、どうすればよかったのか?を考えることが経験につながります。

磯場のヒラスズキや青物など、岩に触れればどんなラインでも切れるような状況でも捕るためにはどうすればいいか。より強靭なタックルで問答無用にぶっこ抜くのも正解ですが、行ってほしくない方向に行かせないように”魚をいなす”のが正しいです。

メディアに出るアングラーは総じてこの経験が一般より多く、そういう時の対処法が考えるより先に動いているのがわかるかと思います。フッキング時にドラグを出している人も少ないはずです。

 

私がサーフで経験した中ではこんなこともありましたが、先に同型をより不利な位置で捕っているから冷静に対処できているわけです。80cm台のヒラメよりアカエイの方が重く育ちますし、これがいい経験になったともいえます。

あの時はドラグゆるくするかベール起こすの間に合ってれば捕れたかもだし、あの時はもっと早く巻きつつポンピングしてれば浮いたかもだし、あの時はとりあえず陸にあげてから毒針をなんとかしてればルアー付けずにリリースできたのにとか…。言い訳がましいですが、同じ轍を踏まないように原因は把握しているので、次に活かすだけです。

ドラグずるずるでスプールに巻いたラインが足りれば、PE0.8号リーダー16lbでも10kg近いブリが不意にサーフで来ても時間こそかかりますが、誰でも捕れます。根掛かり要素がほぼ無いサーフであれば、とりあえずガチッとフッキングして、あとはテキトーにドラグ滑らしてやりとりすれば大抵の魚は捕れるわけですが、そこだけしか経験していないと、根が多い箇所に入った場合の対処がどうしても遅れてしまう。

でも総じて人が「やりにくい」と感じる場所にこそ魚はいるものです。

色んな場所を経験するのも手っ取り早いですが、何故?と考えながら模索していれば自然と知識もつき技術も向上します。というか釣り堀にでも通って、サイトでたくさん魚を掛けて釣り上げるのが一番の技術向上法です。釣り上げないと経験は積まれにくいですしね。

 

最後にまとめると、バラシ軽減をするのならまずフックの点検は必須事項であり、次にあわせが正しくできていたかどうかを考え、乗ってからは技量と経験が物をいうって感じです。

某氏からネタ提供を受け、自分の経験と言葉で好き勝手書きましたが、誰かの参考になれば幸いです。

ここまで見ていただき、ありがとうございました。そして、お疲れ様でした。

 
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